ネットショップの利用規約の必要性

 インターネット上でお買い物ということが当たり前になってもう数年がたちます。 最近では本当にネットショップが増えたように思えます。
  それというのも、本や雑誌、ネット上での「ネットショップは簡単にはじめられる」という宣伝活動の賜物ではないでしょうか。

 しかし、その中できちんと規約を設置しているネットショップはそんなに多くはないと思います。 ネットショップの開業を勧める本・雑誌などでも、この規約の必要性について書いてある本は少ないように感じます。
(特定商取引法に基づく表示(広告)の設置についてはどの本でも書いてあるんですけど・・・。)

 ネットショップで規約がないということは、細かな約束事をせずに売買をするということです。 ですから本来は特定商取引法に基づく表示と同じくらい規約も重要なことなのです。

 特定商取引法から導く規約設置の必要性

特定商取引法での定め

 通常、ネットショップは特定商取引法上では「通信販売」という部類に属します。 
この通信販売を営む事業者は、以下のようなことを守らなければならないと特定商取引法では定めています。

広告の表示(11条)
誇大広告などの禁止(12条)
未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(12条の三・四)
前払い式通信販売の承諾などの通知(13条)

 このうち、1がみなさんよくご存知の「特定商取引法に基づく表示」といわれているものを設置しなさい、という規制です。
 2についても事実と異なる広告(サイト内での宣伝等も含む)をしてはいけない旨の定めです。
 3は最近の特定商取引法の改正で新たに加えられました。 

 ここで問題にするのは4についてです。
 特定商取引法13条では次のように定められています。(出典:総務省法令データ提供システム

第十三条
  販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは指定権利又は役務につき売買契約又は役務提供契約の申込みをした者から当該商品の引渡し若しくは当該権利の 移転又は当該役務の提供に先立つて当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対価の全部又は一部を受領することとする通信販売をする場合において、郵便等により当該商品若しくは当該権利又は当該役務につき売買契約又は役務提供契約の申込みを受け、かつ、当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対 価の全部又は一部を受領したときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、その申込みを承諾する旨又は承諾しない旨(その受領前にその申込みを承諾する旨又は承諾しない旨をその申込みをした者に通知している場合には、その旨)その他の主務省令で定める事項をその者に書面により通知しなければならない。 ただし、当該商品若しくは当該権利の代金又は当該役務の対価の全部又は一部を受領した後遅滞なく当該商品を送付し、若しくは当該権利を移転し、又は当該役務を提供したときは、この限りでない。

 販売業者又は役務提供事業者は、前項本文の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得て、当該通知すべき事項を電磁的方法その他の主務省令で定める方法により提供することができる。この場合において、当該販売業者又は役務提供事業者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

 ・・・・はっきりいって読むのもいやになるかと思います(私もそうでした)が、要約すると、

通信販売を行う事業者で、
商品の代金などを前払いで支払ってもらう販売形態をとる場合には、
購入者からの申し込み後、速やかに申込に対して承諾(拒否)する旨などを、
書面で購入者に通知しなければならない。

ということになります。
 ただし、

商品の代金の入金確認後、商品等を速やかに発送する場合は、この書面での通知は必要ない

 また、

購入者との間に、承諾の通知(拒否の通知)を電子メールで送ることを事前に合意してもらっている場合は、この通知を電子メールで送ることができる

ということも書いてあります。

ネットショップにおける現実

 前述のように特定商取引法では購入者に対して承諾の通知を書面で交付しなければならない、というのが原則です。

 ところが、ほとんどというよりすべてのネットショップが電子メールで購入者との連絡や承諾の通知、受注内容の確認などを行い、この書面での承諾通知の交付を行っていなのが現実ではないでしょうか。

 それらのネットショップの中で、購入者に対して電子メールで通知を行うことを約束しているショップはどれくらいあるでしょうか?

 それでも大きな問題にならないのは、多くのネットショップで利用している買い物かごや在庫管理ソフトによって、在庫のない商品は販売しないという工夫ができているからではないでしょうか。 
 前述のように特定商取引法では速やかに商品等を発送できるのであれば、「事前の通知」自体がいらないことになっているのですから、電子メールで通知を行おうが、そもそも通知を行わなかろうが法律には抵触しないことになります。

 逆にいえば、在庫がない商品を売る可能性が少しでもあるのであれば、この電子メールでの承諾通知をする旨購入者に対して提示しておく必要があることになるかと思います。

 購入者からの同意を得る手段としてはサイト内でのガイドラインの提示や利用規約での提示という形が考えられます。

細かな取り決めをするには規約がもっとも有効な手段

 ネットショップにはさまざまなリスクが存在します。 代金の支払いに関するもの、商品の配送に関するもの、商品の取扱に関するもの、商品に欠陥が存在する場合の対応、売買契約の解除に関するもの・・・・。

 それらを規約以外の方法でサイト内に掲示しても、現在の(裁判所などでの)解釈では、一応は販売条件として購入者の同意は得られたものとみなされる可能性は高いです。(詳しくは規約等の設置のページ又は経済産業省:電子商取引に関する準則で)

 実際問題として多くのネットショップでは規約を設置せず、サイト内や取引画面で支払い方法や配送方法など最低限のルールのみを掲示している例が多く見受けられます。
 ですが、サイト内で販売に関するおおまかなルールを掲載するだけでは足りないのでは、というのがここでの話です。

期間の定め

 ネットショップでよくあるルールとして、商品代金を銀行振込やコンビニ決済などでの前払いで支払ってもらう場合、「14日以内に入金がない場合、キャンセルしたものとします。」というような定めがあります。

 ところが、この「14日間」はどこを基準にしていますか? 「いつ」がその期間の開始日ですか? それが明確でないと、14日間の終了日もあいまいになります。

 たとえば、「申込があった日」を起算日とする場合でも「当社が受け取った日」にするならその旨の定めが別途必要でしょう。
  また、「契約が成立した日」を起算日とする場合でも、「いつ」「何をもって」契約が成立したことにするのか、についての定めが必要です。(法的にもっともリスクが少ないのはこの「契約成立の日」を起算日にする方法なのですが・・・)

 たとえば、わたしがネットショップの規約を作成する場合には、「契約成立の日」を「当社が承諾通知を行った日」と定め、さらにその承諾通知については「電子メールにて行う」「電子メールの送信をもって通知を完了する」旨を定めるようにしています。(もうひとつひねりがあるのですが、それはこちらを参考にしてください)

返品や返金についての定め

 これについては、ネットショップによっては「ノークレームノーリターンで」などで済ませている例もよくみかけます。
 この「ノークレームノーリターン」原則(?)、はっきりいって法律的には通用しないものです。

 商品に致命的な欠陥があった場合や商品の本来の目的を果たさない場合(PCを買ったのに起動しない場合)などでは、返品や交換などの必要性が当然生じます。

 どのような場合にどのような対応をするのか、交換や返品にかかる送料や返金に生じる手数料などの費用をどちらが負担するのかについて、予めきちんと定めておく必要があるのではないでしょうか?
 特に「7日以内であれば返品に応じます」のような定めをする場合には、「いつ」を起算日にするのかについての定めも当然必要になるでしょう。

商品等が購入者に届かなかったときの対応

 ネットショップでは購入者が氏名や住所等の入力を誤まるなどの理由で商品が購入者の元に届かない場合があります。 その際にどのような対応をするのかについては、商品の特性等によって変わってくるものではないでしょうか。

  たとえば、返送されてきた商品を再配送する場合には、その際に生じる費用はどちらが負担するのかについて、生ものや食品だった場合には、そもそも再配送をするのかしないのかについてもそれぞれ定めておく必要があります。

 特に費用負担については、購入者の入力ミスによる場合、ショップ側のミスによる場合、どちらのミスで返送されてきたのかによって対応が変わるのではないでしょうか。 
 その辺についてもしっかりと定めておく必要があるでしょう。

その他の条件等

 そのほかにも、誰に対して販売し、どのような場合には販売を拒否するのかについての定めや、裁判までこじれたような場合の管轄裁判所の定め、損害賠償の限度額などについても最低限定めておいたほうがいいでしょう。

 特に販売条件については、「海外からの申し込みに対してはどのようにするのか」「未成年者からの申し込みに対してはどのようにするのか」「法人からの申し込みについてはどうするのか」については予め考えておいたほうがよいのではないでしょうか。

ポイント制を導入するネットショップについて

 最近では買い物かごASPなどでもポイントの付与やポイントの管理を簡単に行ってくれる高性能なものが安価で出回るようになりました。

 それに伴い、このポイント制を導入するネットショップも増えたのではないかと思います。
 しかし、そのポイントに関するきちんとしたルールを規約できちんと準備して、購入者に対して提示しているショップは果たしてどれくらいあるでしょうか。

 この「ポイント」、もともとがお金でもない、「概念」に近いものなので、それに対する認識を持ちづらいものではあるのですが、民法上では立派な「債権」として扱われます。

 債権であればどうなるのか? というと、きちんとしたルールもなしに扱うととんでもないことになってしまう、ということです。

 例としては、とあるユーザーが1,000ポイントを残して退会手続きを行ったとします。 通常であればこんな場合にはポイントは退会と同時に消滅させたいでしょうが、きちんと「退会時にポイント(債権)は消滅する」と定めていなければ、この退会したユーザーは1,000ポイントに該当する金額を当然主張できることになります。

 事前に定めてユーザーから同意を得ているルールに則らずに「自分のサイトのものなんだから」、と安易にポイントを消滅させたり、変更したりすると、民法上の「不法行為」として損害賠償という話にもなりかねません。

 ポイント制を導入する場合には、ポイントに関するルールをネットショップの商品販売のルールのほかにきちんと準備する必要があります。 ほとんどの場合、ポイントを管理するためにIDやパスワードでユーザーを管理することになるかと思いますので、「IDやパスワードでユーザーを管理するサイトの規約の特徴」も同時にごらんになってください。

 

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行政書士・塩坂 壇

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