特定商取引法とはどんな法律?

大部分のネットショップは「通信販売」

 「特定商取引法に基づく表示」という言葉はネット ショップを開業又は運営する際に一度は必ず聞くものではないでしょうか? この特定商取引法という法律は、通信販売や訪問販売、マルチ商法、キャッチセー ルス、テレフォンアポイント商法、などの「通常の取引方法ではない」販売方法について、それらの商法を行う事業者に対して、取引方法や広告の仕方、守らな ければならないルール等を規定している法律です。

 一般的なネットショップは特定商取引法の分類上は「通信販売」という扱いをしています。 ただし、マルチ商法のような連鎖販売をネット上で行う場合にはネットショップであっても「連鎖販売取引」にあたるものと考えられます。

  この特定商取引法が制定された最大の理由として、これらのような特殊な取引方法を行う事業者に「悪徳業者」が多く(というより悪徳業者がよく利用してい た)、その悪徳業者対策として、悪徳業者の儲けの手法を潰し、悪徳業者が困るであろう表示義務を作っていったという経緯があります。
  この経緯を知った上で特定商取引法の表示について何を書く必要があるかを考えてみると「なるほど」と感心することが多くあります。

 この特定商取引法の規制を受けるネットショップは、すべての「商品若しくは指定権利(↓)」の販売を行う事業者(サイト)であって、適用除外(↓)に該当しない場合です。

全面適用除外(法第26条第1項)(訪販・通販・電話勧誘)
・ 営業のために又は営業として行われる取引
・ 本邦外にある者に対して(商品の輸出など)
・ 国又は地方公共団体が行うもの
・ 団体の構成員向け(特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合)
・ 事業者がその従業員に対して行うもの
・ 株式会社以外が発行する新聞紙の販売
・ 他の法令で消費者の利益を保護することができる等と認められるもの(宅建業法等)

指定権利
・ 保養のための施設又はスポーツ施設を利用する権利
・ 映画、演劇、音楽、スポーツ、写真又は絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞し、又は観覧する権利
・ 語学の教授を受ける権利

特定商取引法が「ネットショップ運営者」に課している義務

 特定商取引法でネットショップ運営者(通信販売事業者)に対して課しているのは、

広告記載義務(事業者の名称や住所、取引方法などを表示する義務)
誇大広告の禁止
前払式通信販売における承諾等の通知
顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止

の4つの義務です。
 このうち広告規制については次の項で説明するとして、その他3つについて順に見ていきましょう。

 まず、誇大広告の禁止ですが、これは特定商取引法のみならず、 景表法やJAS法などでも規制されています。 事業者は広告において、商品の性能、権利・役務の内容、返品特約などについて、著しく事実と相違する表示を し、実際のものより著しく優良であり又は有利であると人を誤認させる表示をしてはなりません。

 次に前払い式通信販売における承諾等の通知義務についてですが、これは代金などを商品等の受け取り前に支払ってもらうという取引形態のネットショップが、代金等をを受領した際に、申し込みを承諾する又は承諾しない旨を申込者に対して「書面で」 通知しなければならないというものです(ただし代金の受領から遅滞なく商品等を送付する場合はこの通知は必要ありません)。
この「書面で」通知を行う代わりとして電子メールなどで通知を行う場合には、申込者からの事前の承諾が必要になります(ということは必然的にネットショッ プの規約にこの電子メールでの通知方法の定めが必要になり、申し込みの際にきちんと利用者に提示する必要性があるということになるかと思います)。

 次の顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為に ついては、よくある例として俗にいう「ワンクリック詐欺」が代表例としてあげられるかと思います。 ワンクリック詐欺まで極端でなくても、たとえば「無料 サービスの申し込みをしていたはずなのに、いつの間にか有料サービスへの登録に切り替わり、知らず知らずに有料サービスの申し込みをさせてしまう」ような 行為は禁止されています。
この「顧客の意に反して~」に関連して、ネットショップなどの電子商取引を行うものに対しては「電子契約法」第3条で利用者の操作ミスによる契約申し込みを防止するために「確認を求める措置」を講じる義務も設けられています。

特定商取引法にみる悪徳業者撃退の歴史

  悪徳業者の悪行とそれを取り締まる法律・警察などとの「いたちごっこ」はいつの世もどんな場所でも起こっていることではありますが、特定商取引法のいろいろな取り決めも、その裏には悪徳業者を取り締まる監督庁の血のにじむような(?)苦労があった、ということを考えてみると、なかなか面白いも のです。

 たとえば、「商品代金以外にかかる手数料などの表示」についてみてみると、多様すぎて表示するスペースがない場合には、「○○円(下限)~△△円(上限)」の ような書き方でもよい、ということになっていますが、そのようになっているのには、その昔、たとえば5,000円の商品を買ったのに、「送料だの手数料だ の工賃だの~~~」といって何万円というお金を請求する業者が多数いた、という経緯があります。 このような悪徳業者の手口を潰すための取り決めなんですね。

  次に「商品の引渡し時期を明確にする」についてみてみると、特に郵送で商品等を発送する場合、代金を支払ってから商品が実際に受け取るまでタイムラグがあ るために、悪徳業者が代金だけ受け取って商品を発送しないというトラブルが相次いだことが原因でこのような取り決めがなされました。 また、事業者の名称 や電話番号、住所の表示を義務付けているのも、これらのトラブルを少しでも減らそうとする努力の結晶ということもできるかと思います。

  たしかに、実際にネットショップオーナーになって、この特定商取引法の規制を受ける側となってみると面倒な法律ではありますが、消費者にとってはなくては ならない法律のひとつといっても過言ではありません。 自分のネットショップが「悪徳業者」と誤認されないためにも、きちんと表示義務を守って健全な取引 を心がけていきましょう。

 

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行政書士・塩坂 壇

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